エアコンの電気工事には、電気工事士の資格がなければできない工事があります。エアコンには専用のコンセントや専用回路が必要ということをご存じでしょうか。
いざエアコンを設置しようとしたときに確認不足で工事ができなかったり思わぬ追加料金が発生したりする場合があります。
本記事では、電気工事士の資格がなければ行えないエアコン電気工事のケースと、エアコンの電気工事を行う前の確認事項を解説します。エアコンを購入する前に、まずは自宅のコンセントなどのチェックをしてみましょう。
エアコンの電気工事に資格は必要か
エアコンの電気工事には、電気工事士の資格が必要なケースがあります。
資格が必要な範囲を無資格の素人が行うと、罰金や懲役が課せられる場合があります。それだけでなく、事故につながる恐れも。
無資格でもできるケースと資格が必要なケースをしっかり確認しましょう。
無資格でできるケース
エアコン取り付けの際、無資格でも行えるケースは以下のような場合です。
- エアコン室内機の壁への固定
- 化粧カバーの設置
- アース線のねじ止め
つまり、電気に直接関わらない範囲でエアコンの取り付けが完了する場合は、無資格の人でも作業可能です。
しかし、重たい室内機・室外機の設置やポンプを使用してエアコンの配管内部を真空にする真空引きと呼ばれる作業など、素人には難易度の高い作業が多いといえるでしょう。
電気工事士の資格が必須なケース
エアコンの取り付けで、電気工事士の資格が必須なケースは以下のような場合です。
- コンセントの増設・移設
- 電圧の切り替え工事
- 内外接続電線の壁への固定
- 600vを超える電圧で使用するエアコンの設置
エアコン設置工事を安全に行うため、経済産業省原子力安全・保安院が2008年に「エアコン設置工事に係る電気工事士法の解釈適用」を策定しました。エアコンの電気工事はこの解釈に則り、適切に行われるよう決められています。
もし、電気工事士の資格を持たないまま、上記のような作業を行った場合、3万円以下の罰金もしくは3年以下の懲役という罰則が課せられるので、注意しましょう。
エアコンの電気工事前に確認してほしいこと4点
エアコンの電気工事を依頼する前に確認してほしいことは、以下の4点です。
- エアコン専用コンセントの有無
- エアコン用の専用回路があるか
- 室内機・室外機の設置スペースの確保
- エアコン専用の配管穴の有無
それぞれ詳しく解説します。
1.エアコン専用コンセントの有無
エアコンには専用のコンセントが必要です。普段、よく目にするコンセントは複数の電化製品に電力を供給する造りになっています。
しかし、エアコンには2000Wほどの電力が必要で、一般的なコンセントではまかなえません。無理に使用すると、ブレーカーが落ちたりコンセント周辺に熱が発生したり、最悪の場合は火災につながる危険もあります。
エアコン専用のコンセントか見分ける方法は、以下の点を確認することです。
- 壁の上部にあるか
- 差し込み口の形状が通常のコンセントと違うか
- 分電盤に「エアコン」と記載があるブレーカーがあるか
特に、差し込み口の形状は注意してチェックしましょう。通常の家庭用エアコンは100V
で使用可能ですが、12畳以上の広い部屋に使用するエアコンの場合、200V必要な場合があります。
コンセントの差し込み口の形状は使用するエアコンの電圧と合っていなければいけません。もし、新設するエアコンの電圧と専用コンセントの電圧が異なる場合、電圧切り替えの追加工事が必要です。
2.エアコン用の専用回路があるか
ブレーカーから直接引かれているコンセントのことを専用回路と呼びます。エアコン用の専用回路があるかは、分電盤を確認しましょう。
分電盤に「エアコン」などと表記があるブレーカーがあれば、それはエアコン用の専用回路があるということになります。もし、エアコンを設置したい部屋にエアコン用の専用回路がない場合は、増設しなければいけません。
エアコン用の専用回路を増設する際は、分電盤の空いているブレーカーを使用します。もし、分電盤に空きのブレーカーがないときは、分電盤ごと取り替える工事が必要です。
3.室内機・室外機の設置スペースの確保
エアコンの室内機の設置スペースは機種によって異なります。一般的に、壁や天井から5cm以上離して設置するなど、それぞれの機種に決まりがあります。
また、エアコン専用のコンセントや配管穴との位置関係もチェックしましょう。一般的に、エアコンの電源コードは1mほどと短めです。
もしコードが届かない場合、エアコン専用の延長コードも存在します。より安全ですっきりした見た目を求める場合は、専用コンセントをコードが届く位置に新設するとよいでしょう。
室外機についても、前方を20cm以上壁から5cm以上の空間確保や、プロパンガス容器とは2m以上離すなどの設置条件があります。
4.エアコン専用の配管穴の有無
エアコンの室内機と室外機をつなぐ配管を通すための穴が必要です。エアコン設置予定の場所に穴が開いていなければ、穴を開けるための工事を行います。
所有住宅や自社ビルの場合は問題ありませんが、賃貸の場合は管理会社に穴を開けてよいか事前に確認しましょう。
エアコンの電気工事にかかる費用
エアコンの電気工事は、一般的に、標準工事と追加工事の2つに分類されます。それぞれの費用相場を見てみましょう。
標準工事の場合
標準工事の場合の費用相場は、1万円〜2万5000円ほどです。標準工事とは、以下のようなエアコン設置のための基本的な工事を差します。
- 室内機・室外機の設置
- 配管パイプの取り付け(長さ制限あり)
- 配管穴貫通工事(1穴のみ)
- 真空引き
エアコン標準工事は、エアコンの冷房能力により費用が異なります。3.6kW〜4.0kWを境に金額がアップするケースがほとんどです。
追加工事が必要な場合
追加工事は内容によって費用がさまざまです。エアコンの電気工事で追加費用が発生する一般的な例は以下のような場合です。
- 電圧の切り替え…2000円~4000円ほど
- ブレーカー交換…2000円~8000円ほど
- 専用回路の増設…1万4000円~1万6000円ほど
- 室外機の設置場所が特殊な場合…1万円~2万5000円ほど
- 配管穴貫通工事…2000円~2万円
- 配管カバーの取り付け…5000円以上
- 既存エアコンの取り外し…4000円~1万円ほど
エアコンを設置する階数や室外機との距離など状況に応じて費用が前後します。
可能であれば、エアコンの電気工事を依頼する段階で、設置場所や専用コンセントの有無確認もかねて、見積もりをとると安心です。
まとめ
エアコンの電気工事は、基本的に電気工事士の資格を有する専門業者に依頼するのが安心です。無資格で行える範囲もありますが、専門的な知識がなければ間違った設置の仕方をして、事故やケガにつながる恐れもあります。
エアコンの工事を依頼する前に、専用コンセントの有無やスペースの確保など必要なチェックを行いましょう。事前に見積もりをとると、工事費用の概算が分かり、安心して依頼できます。